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おしぼりの知識
- 「おしぼりの歴史」 知ってました?
- 2015年02月19日
- おしぼりの知識
仕事終わりに入った飲食店で熱々のおしぼりで手を拭くと、ほっと心が軽くなるような気がします。たった一枚のおしぼりですが、不思議と心を和ませる力があります。普段何気なく使っているおしぼりには、様々な歴史があったのをご存知でしょうか?
おしぼりは日本が発祥と言われています。古くは江戸時代(一説では室町時代)に、お公家さんが客人に「濡れた布」を出したのが、おしぼりの原型とも言われます。時代劇で旅籠に到着した客に水の入った桶と手ぬぐいを出す場面をよく見かけますが、この頃の日本には既に、水で濡らしたおしぼりを使う習慣があったのでしょう。
汗をかきやすい日本の高温多湿な気候と、清潔好きな日本人の気質によって、おしぼりの文化が深く根付いていったのかもしれません。その語源については、水に浸した手ぬぐいをしぼって出したことから、「おしぼり」と呼ばれるようになったと言われます。
その後時代は流れ、戦争の混乱でおしぼりを使うという習慣は一時期薄れてしまいました。しかし、戦後の復興で飲食店が増え始め、再びおしぼりの習慣が徐々に普及していきます。
当時は、おしぼりを自分の店で洗い手作業でまるめてお客様に提供していました。しかし、自分の店で用意する手間を省くため、昭和30年頃には「貸しおしぼり」のビジネスが始まります。この頃はまだ、家庭用洗濯機で洗ったおしぼりを一本一本巻いて飲食店などに卸すという、家内工業的な生産方式でした。
その後も飲食店の増加に伴い、貸しおしぼりビジネスはどんどん普及していきます。そして、昭和35年頃に「おしぼり包装機」が登場します。このおしぼり包装機や業務用洗濯機により、おしぼりの大量生産が可能になりました。昭和39年の東京オリンピックを契機に外食産業が発展し、それに比例して貸しおしぼりの需要もますます増え、貸しおしぼりビジネスはますます発展していきました。
その後も貸しおしぼりビジネスは成長を続け、様々な業者が参入しますが、中には粗悪なおしぼりを出す業者も出始めます。そのため、昭和58年に厚生労働省より貸しおしぼりの衛生基準が発表されました。異色・変色がないことはもちろん、大腸菌等の細菌がおしぼりから検出されないかという点が検査されたり、その他にも衛生に関して様々な厳しい基準が設定されています。この指導基準に基づき、全国おしぼり協同組合連合会が管理基準の指標となる「衛生マーク」を制定するようになりました。
昭和50年代には便利な紙おしぼりが登場します。コンビニエンスストアやファーストフード店の増加に伴って、多く使用されるようになりました。紙おしぼりはその手軽さから広く使われるようになりますが、近年は布の貸しおしぼりがエコの観点から見直されています。
おしぼりが利用されるのは飲食店だけではなく、アミューズメント施設やゴルフ場、病院、スパ施設、タクシー、美容室など、様々な分野に広がっていきました。さらに、いつでも清潔なおしぼりを使える「おしぼり製造機」も登場し、様々な施設で使われるようになりました。また、高級タオル地のおしぼりや、良い香りのするアロマおしぼりなど、用途に合わせた多種多様なおしぼりまで登場しました。
今や、日本でおしぼりのサービスはなくてはならないものとなっていますが、海外ではおしぼりを使う習慣がない国がほとんどです。そのため、日本ならではのサービスとして、海外で注目されはじめています。国際線の機内食サービスで提供される熱いおしぼりは、特に外国人に喜ばれるそうです。
普段何気なく使っていたおしぼりですが、その歴史は古く、近年ではその価値が見直されつつあります。日本人のおもてなしの心を表す文化として、大事にしていきたいものです。